ブランドの違い
筆者がスポーツショップで接客していた時によく聞かれる質問がありました。

お母さん
シューズが欲しいんだけど、どのブランドがいいの?
野球であればミズノプロが憧れだとか、サッカースパイクはナイキがかっこいいだとか、ブランドに対するイメージのようなものは確かに存在します。
ただスポーツショップで上に出てくるお母さんのような質問をしてしまうと、店員さんは
①その時にお店が販売したいブランドをオススメする
②店員さんの好きな(使っていた)ブランドをオススメする
のどちらかになることが多いでしょう。
①も②も回答としては決して悪くはありませんが、私に言わせれば回答としては

どのブランドでもいいですよ!
となります。
本当にこんな答え方だとやる気がない店員さんに思われてしまいますので、実際にはもっと上手に話を進めるものですが、「どのブランドでもいい」というのは「だいたいのブランドではいくつかのラインナップを用意していて、使う人の目的や趣向によって選ぶことができるようになっている」という意味です。
例えば車を買う時、ディーラーへ行く前に雑誌で下調べする時を想像して考えてみましょう。
ちなみに車でなくても家を選ぶ時でも家電を買う時でもなんでもいいですよ!
雑誌を開くとメーカー別に車が紹介されていることはあまりなく、「ミニバン」とか「軽自動車」のようにカテゴリーや使用するシチュエーションごとに分類されていることが多いはずです。
家電量販店ならメーカーごとに家電を置いているお店はあまりなく、例えばテレビのコーナーなら画面サイズで、冷蔵庫のコーナーなら容量でおおまかに分けて置いていますよね。
これと同じでスポーツ用品も使うシチュエーションごとに分類が分かれていて、ここで言うシチュエーションというのはだいたいの場合、「初心者」や「中級者」のように使う人の技量に合わせた分類になっていたり、「小学生向け」や「女性向け」のように使う人の力量に合わせた分類になっています。
ですので冒頭の質問に対しては、

どのブランドを選んだとしても、あなたのレベルや目的に合った商品を選ぶことができますよ!
というのが私なりの答え方になります。
本サイトではこれから部活動を始める皆さんができるだけ迷わずに、また偏見をもたずに商品を選ぶお手伝いができるように、各スポーツに分けて道具の選び方を紹介しています。
ちなみにブランドへの憧れやデザイン・カラーで選ぶというのも、それも立派な選び方です!
「本サイトを見て商品を選んだけど、どうしても好きになれそうもない」くらいなら、最終的に自分の気に入ったものを選んでも問題ありませんよ!
使用者の違い
基本的にはどのブランドでも、使う人のレベルや目的に沿った道具選びができると書きました。
つまりどのブランドでも誰しもが使いやすい初心者向け商品もあれば、トッププレーヤーにとっては最高のパフォーマンスを引き出してくれる上級者向け商品もあるということです。
さて部活の道具選びあるあるでこんなことがよくあります。

俺が使ってるこのラケットすごく調子いいんだよ!
お前もこれと同じの買って来いよ!
この先輩は良かれと思ってかわいい後輩に自分が信頼するラケットを紹介しました。
後輩も部活内で一番上手な先輩が勧めてくれたラケットを使いたいので、さっそく週末にお父さんに頼み込んでショップに買いに来ます。
ところが店員さんからは期待外れ、がっかりするような返事が…

ごめんなさいね。でもこのラケットはおススメできないな。
流れを考えると店員さんの対応が残念に見え、買いに来た親子もかわいそうに見えてきますね。
ただ店員さんがおススメできないと言ったのにはキチンと理由があって…
この先輩に勧めてもらったラケットは実はかなりの上級者向けの商品で、しかも非常に重量の重たいものでした。何も知らずにまだまだ筋力も技術も未熟な新入部員が使うと、使いにくいどころかケガをしてしまうリスクだってあり得るので、店員さんはおススメできなかったのです。
部活は一般的に入部から引退まで2年ちょっとしかない期間限定の活動です。この短期間で必死に練習し試合で結果を出さなければいけない、人によっては人生で最初で最後の真剣なスポーツへの取り組みです。
にもかかわらず、道具が原因でケガしてしまったらその間の練習はできませんし、タイミングによってはそのまま引退なんてことにもなりかねません。
ここでも例えを出しますが、車に置き換えても同じで、超高性能で誰もが憧れるようなスポーツカーはほとんどのドライバーにとっては運転しづらいものです。最悪の場合コントロールできずに事故を起こしてしまうことは容易に想像できます。
ただ同じメーカーから誰でも安心して乗ることができるような車もラインナップされていたりしますよね。
憧れやデザインで選ぶのもアリとは前述しましたが、このケースのように避けなければいけないケースもあります。本サイトでは少しでも安心な道具選びができるように、主に初心者に向けて選ぶべき商品を紹介しています。
またもしショップなどで店員さんから商品選びを手伝ってほしい場合は、可能な限りそのスポーツの専任担当がいるショップを頼りたいものです。ショップ選びについては後述しますね。
価格の違い
ブランドの違いのほか、こんなこともよく言われました。

初心者だから一番安いやつでいいよ…
まず確実に言えるのは上のおじいちゃんがいう通り、部活生だけでなくこれからスポーツを始める人が値段の高い商品を選ぶ必要はまったくないということです。
スポーツ用品に限らずかもしれませんが、基本的に値段の高い商品というのは各メーカー自慢の最先端の技術が使われていたり、耐久性よりも最高のパフォーマンスが出せることを優先した素材が使われていたりします。
言い方は悪いですが、これからスポーツを始める初心者がその機能の違いを感じたり、その性能を最大限に活かすことは難しく、そう感じたとしてもそれは”気のせい”です。
また残念なことに、始めてはみたものの自分には合わずそのスポーツを辞めてしまうことになることもあり得るため、初めから高額な商品を購入してもそのメリットよりもリスクの方が大きいと言えます。
スポーツ以外の例で言えば、免許を取り立ての初心者ドライバーで初めから高級車を買う人は少なく、リーズナブルなコンパクトカーや軽自動車を選ぶ人が多いのと同じです。
前述のように基本的に「高価格商品=技術を活かす高機能商品」です。
ただ一部の商品には高機能の定義を「=未熟な技術をフォローしてくれる」というように捉えて商品設計をしているものもあります。
車の例で言えば、未熟な運転技術をアシストしてくれる運転補助機能が、どちらかといえば初心者ドライバーにこそ役に立つみたいなことです。
つまり予算に余裕さえあれば、必ずしも「高価格商品=上級者向け」ではないということは覚えておいて欲しいです。
ショップの違い
前述したショップ選びについてお話します。
まずよくある勘違いですが、「大手チェーン=ダメ」「しっかり見てもらうなら地元の専門ショップに限る」というのはもはや都市伝説です。
当然頼りになる専任の店員さんに出会える確率は専門ショップの方が高いでしょう。
ただし大手チェーンにだってかなりマニアックで知識の深い店員さんはいくらでもいますし、逆に地元の専門ショップでも店主が時代の流れを無視した昔から何一つ変わらない説明をしているようなお店もあります。
あまり考えたくないことですが、メーカーからしたら大手チェーンと地元ショップのどちらがより大切な取引先でしょうか?
もちろん「大手チェーンの方が商品ラインナップも商品知識も圧倒的に上」なんてことはありませんが、購入後のサポート(メーカー対応の意味)や公平な接客といったポイントまで含めて考えれば、間違っても大手チェーンでスポーツ用品を買ってはいけないなんていうのはただの都市伝説であることが分かるでしょう。
大事なのは”どこで買うか”より”誰から買うか”であり、これが車や家の購入なら言わずもがなの常識でもあったりします。
大手チェーンがダメだとか言われる最大の原因はアルバイトスタッフの存在と専門スタッフの人事異動と言われています。ちなみに本来はアルバイト=NGとしてしまうのはナンセンスです。ここで言われているのは店舗運営上の人数合わせで雇用している知識・経験のない短期スタッフのことと考えたいです。
ちなみに全国展開の大手だからこそ、せっかく見つけた信頼できる専門スタッフが人事異動で遠くの店舗に行ってしまい、後任がなんだか頼りないみたいな話は確かにあるあるです。
さてここからが本題です。
- まずはお客様のヒアリングから入る
⇒お客様のレベルや来店動機、購入商品に何を求めているかはお客様本人に聞くしかありませんよね。 - おススメ商品がブランド単位ではない
⇒前述のとおりですが、基本的にはブランドそのものがおススメになることはありません。この「ブランドならコレ、このブランドならコレ」とお客様に合わせた適切なレベル設定がなされているかどうかが見極めポイントです。 - 一度来店されたお客様を覚えている
⇒名前・顔を憶えているというよりは、どんな悩みがあってどの商品を買っていったかみたいな情報が頭に入っていることが重要です。 - 加工技術が優れている
⇒これはテニスや野球など一部のスポーツに限ったことで、まったく関係のないスポーツもあります。よく言われることですが、加工はスピードよりも丁寧さです。たまにありますがスピードを売りにしているようなスタッフさん(お店)は要注意です。 - 出勤スケジュール(シフト)が決まっている
⇒シフトがある程度決まっていれば、いつお店に行けばお目当ての店員さんに会えるかも決まってきます。上記のような加工が伴う場合はなおさらです。今後何年か相談に乗ってもらうスタッフさんですから、できる限り同じ方に面倒を見てもらった方が安心です。 - レジにいるスタッフに問い合わせをしない
⇒売り場のどこにもスタッフさんがおらずやむなくという場合を除いて、レジ担当者に商品のことを聞くのはおススメできません。もちろん例外はありますが、だいたいの場合レジにいるのは何の専門担当でもない方だったり、初期配置されている新人さんだったりする場合が多いです。
上記項目は筆者が店長時代にスタッフ教育の重要ポイントとして挙げていた項目です。すべての項目ですべて理想的にというのはかなり難しいことですが、多く当てはまるほど良いスタッフさん(お店)であることは間違いありません。確かに地元の専門ショップの方が確率的には出会えると思います。ただ条件さえ満たせばどこの店員さんであろうと問題ありません。
もちろんスタッフ選び以外にも、商品在庫量・商品鮮度・利便性・販売価格・保証・メーカーとの関係性なども「お店選び」に重要な項目はたくさんありますが、だいたい何でもインターネットで買えてしまう今の時代にわざわざ店舗に足を運ぶ最大の目的はスタッフさんでしょう。